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Brandish -Game Pre Story
青き月の都

自分の住むその地に、かつてどのようなことがあったかを知る者がどれだけいるのだろうか。人は常に現在に生き、現在に死んでいく。人の一生など果てしなく流れ去る歴史の中では一瞬にすぎない。
どれほどの野心があろうとも、どれほど命ごいをしようとも、定められた一生の時間は変わりようもなく、人は現在に生き、過去は永遠に過去として語られるしかない。
その結果、語られることのない過去は無きものとなる。
ここにも語られることのない過去を持つ国があった。
バノウルドは美しい景観をもつ小国だった。とくに青き月夜の景観は旅人たちの間にも絶景と噂されるものだった。

取りまく城壁からのぞく高い塔。城壁へとつづく石畳の橋。城のすぐ近くまで流れる大河はよどみもなく清らかに流れ、月夜ともなれば、その仄かな明かりを水面に美しく映し出す。
この絵画から切り取ったような美しい景観を見れば、この地に失われた忌まわしい過去があったことなど誰にも想像できないだろう。
だが、その過去ゆえにか、美しさとは裏腹に、この国は今、ゆるやかな病にむしばまれていた。
もともとが街道を外れた小国である。いくら美しい国といっても正統な国策では満足な繁栄は望めなかった。国王ベフュースはその土地がらを利用して、諸国を追われた犯罪者たちを庇護し、治外法権を名目としてホトボリが冷めるまでこの国に潜伏させていた。彼らは互いに殺し合い、賞金首を落とし合う。どの首も落ちれば金に変わった。その何割かを税として国に支払わせ、国の豊かさは保たれる。荒療治の国策として始まったものだったが、いつしかこの国を訪れる無法者たちの数が膨れ上がるにつれ、首切税を着服し、私腹をこやす官吏たちが現われ始めた。美しい景観とは似合わず城は腐敗し、街の中では暴力的な匂いが充満していた。
おかげで普通の旅人はここ数年、ほとんどたちよる者はない。青き月の都は今や荒廃の一途をたどっていたのである。

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