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Brandish -Game Pre Story

ビスタルの野望


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 偉大なるドラゴンに守られし小国ビトール。
 街の中央には世の平穏を象徴するかのように巨大で壮厳な塔がそびえ立っていた。街は太古より存在する塔を囲むようにつくられ、暮らす人々は、どの顔も活気に満ちていた。満ち足りた生活は、時として邪心をはぐくむ。
 ここに、密かな邪心を抱く王がいた。時の王ビスタルは今日の繁栄だけに飽き足らなかった。彼はその地方的権力に甘んじることなく、より強い権力を望み、勢力の拡大を夢見ていたのだ。
 国は王ビスタルと、祭事を受け持ち巨大な塔を管轄する大僧正バヌノアとの調和ある政策の上になりたっている。その調和が一つの伝承を発端として崩れようとしていた。
 この国のどこかに「すべてを制する力の源」が存在する。
 ビスタルは子供の頃、おとぎ話として聞かされた伝承に、今さらながらに興味をひかれていた。それが事実ならば野望を抱くものを十分に魅了するものだった。
 伝承は太古から大僧正のみに受け継がれ、王家にも明かされないものとされている。祭事の聖域とされる塔の上層は王さえも侵入の許されぬ空間だった。
 ビスタルは伝承の真実を確かめるべく、大僧正バヌノアに詰め寄った。
 「伝承が真実ならば、さらなる繁栄のために、力の秘密を語られよ」
 「それは恐れ多き行為であられる。たとえ火の雨が降ろうとも、それを語ることはまかりならぬ。」
 いく度の問答を繰り返しても、大僧正は語ろうとしなかった。
 「もし、それが存在するならば・・・・・・」ビスタルは先史の遺産である巨大な塔にこそ、その鍵になるものがあると期待した。王は大僧正をあざむき、僧侶を装わせた調査官を塔の内部に送り込んだ。
 やがて、いく日かが過ぎ、探索を続けていた調査官が、塔から一冊の古びた書を持ち帰った。その書には判読の困難な古代文字がつづられていた。
 ただちに王は国内の学者たちを集め、古代文字の解読をさせた。
 徐々にその内容が明らかになるにつれ、解読に携わる学者たちに不安の表情が浮かび始める。
 「我々は、知ってはならぬことを知り、今、触れてはならぬものに触れようとしているのではないのだろうか・・・・・・」
 古代文字でつづられたその書面にはビスタルの期待通り恐るべき力の秘密が記されていたのだ。
 「ビトールの守護神である偉大なるドラゴンと、そのすべての力の源は塔の頂上に存在する。そして、その力の源を制する者は世のすべてを制する者となる。
 されど悪しき心を持つものは決して近づくなかれ。開放を待つ力は、汚れたものには汚れを与え、清き者には清きを与えるものなり・・・・・・。」
 学者たちはその事実を王に伝えるべきか迷いあぐねた。それが無駄なる迷いであることを知りながら、各々が国を代表する知恵者として、心に浮かべずにはいられないことがらと悟っていたのだ。
 内容を王に伝えた学者の声は、病の床で苦しむ老人のように震えていた。
 王は心中に秘めたる野望を達成するために、この報告を聞き逃すべくもなく、微笑を浮かべ、あやまちの決断を下した。
 「力は有益であるゆえに露見を惜しんでいるに違いない。警告の言葉など、ただの脅しだ。力は使ってこそ価値があるのだ。」
 王は警告を無視し、絶対的権力を我がものにしようと動き出した。
 数日後、密かに組織した王の軍隊は聖域の塔に投入された。
 その動きを知った大僧正バヌノア、慌てふためいて軍隊の前に飛び出した。
 「待たれい!神聖なる聖域に兵が踏み入るとは・・・・・・去れっ、去られよ!即刻、ここから立ち去るのじゃ!」
 老人とは思えぬ剣幕でバヌノアは叫びたてた。
 その声に、兵士たちの後ろからビスタルが静かに歩み出た。
 「大僧正。王の行動を阻んだ罪として、この場で切り捨てる」
 「愚かな・・・・・・」
 ビスタルはわずかに首を動かせ妨害者の抹殺を命じた。
 無表情な兵士の一人が剣を抜き、バヌノアの肩口に剣を降りおろす。大僧正は声も立てず息絶えて崩れた。
 兵士たちは再び歩き始める。上層に行くにしたがい、不思議な神気が増長するのをビスタルは感じた。
 軍隊は塔の頂上を目指し、黙々と薄暗い回廊を進んだ。
 やがて、いくつもの階段と扉を過ぎ、ビスタルの率いる軍隊は塔の頂上に達した。
 塔の頂上の中央には鎮座する巨大なドラゴンの石像が据えられていた。
 「石像か・・・・・・。守護神と賛える『偉大なるドラゴン』が石像だったとは・・・・・・。伝承とは、所詮このようなものなのか・・・・・・。」
 王が幻滅を感じ始めた時、ドラゴンの石像は青白い光を帯び、しだいに生気のある青きドラゴンへと移り変わった。





 兵士たちはどよめきの中で見ていた。野望に魅入られた王は恐れることなくドラゴンの前に立った。
 「偉大なるドラゴンよ!我はビトールの王、ビスタル。すべてを制する力の源をわれに与えたまえ!」
 その呼びかけに、ドラゴンはビスタルの心に直接答えた。
 「血塗られた王よ・・・・・・。汚れた王よ・・・・・・。あやまちの王よ・・・・・・。そなたの心は醜さの形象なり・・・・・・。ならばその心そのものの醜き姿を与えるものなり・・・・・・。」
 ドラゴンは一度翼を伸ばし広げると、長い首と翼を屈めて全身で包み込むような形を取った。
 ふいに前屈みに包み込んだ翼の隙間から、強烈な光がほとばしった。
 「力を解放させてはならん!切れっ!ドラゴンを切り捨てよ!」
 ビスタルは後悔に震え、叫んでいた。兵士たちは脅えながらも剣を抜き、つぎつぎとドラゴンに向け切りかかった。守護神である偉大なるドラゴンに剣先を向けたのだ。偉大なるドラゴンは抵抗しなかった。ただ、なすがままに兵士たちの剣を受け、力を放ちつづけた。
 偉大なるドラゴンは最後になげきに似た叫びを上げ、自らの命と引きかえに力を解放したのだ。





 その力に、呪われた王は心そのものの邪悪で醜い姿に変えられ、力は強大なるものゆえに、背信の国家ビトールには、それ自体に封印を施される運命を与えられた。力はビスタルと兵士たちに及ぶものだけにとどまらず、塔とその周辺を一夜にして民とともに、地底の奥深くへと埋没させたのである。
 それから千年。
 壮厳な塔も、呪われた王も・・・・・・。すべては都とともに地中に埋もれ、伝説にもならない失われた歴史となった。
 そして今、地上の民から忘れ去られた過去の残像が、人知れず地の底で地上の光を求めて不気味な胎動を始めていたのだった。


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ビスタルの野望 蒼い月の都 流浪の剣士 冥府への穴