特別寄稿
ロマンシア アナザーレジェンド
ファンを戸惑わせた日本ファルコムの新作ラッシュ
'85年の『ザナドゥ』で、ゲームメーカーとしての地位を確立した日本ファルコム。『ザナドゥ』が15ヶ月連続でログインのヒットチャートNo.1を続けた怪物ソフトだっただけに、ファルコムの次回作に対するファンの期待は、これまでになく大きいものだった。そして同社はその期待を受けて『ザナドゥ・シナリオU』を制作。'86年10月発売に向けて、ゲーム雑誌の誌面では開発状況が伝えられていった。このゲームは、『ザナドゥ』の『熱狂的なファン向け』というか『専用』に、より難しく、いや『イジワルに』作られていた。これが『ザナドゥ』のマニアの心を捉え、'87年1月号、2月号のログインのヒットチャートで連続1位を獲得する結果となった。
しかし、この作品はファンの期待に応えるため=ファンサービスのためのソフトで、本当に作りたかったのは『ロマンシア』だったのではないかと思う。『シナリオU』と『ロマンシア』は、ともに'86年10月の発売。本当に作りたい作品でなければ、そんなスケジュールでソフトを作るとは思えない。
そして、ログイン'86年10月号での『ロマンシア』の発表記事。この反響は大きかったが、ゲームの全体像を細かに伝えない、いわゆるスクープ記事だったため、読者の反応はさまざまだった。特に画面のイメージからすると『易しそう』で、『ザナドゥT・U』との違いに戸惑っているファンが多かった。もちろん、期待するファンが圧倒的に多かったのだが、その期待が確信に変わるには、その後1ヶ月を待たなければならなかった。
羊の皮をかぶった狼?
『ロマンシア』は横スクロールタイプのアクションアドベンチャーゲーム。登場キャラクターのかわいらしさもあって、一見するととても単純な、どこにでもありそうなアクションゲームに見える。ただのアクションゲームとちょっと違うなと思えるのは、ヒットポイントのほかにマジックポイントやカルマなどのポイントメーターが有る点ぐらいだ。
プレイを始めてみても、スクロールの滑らかさがこれまでのゲームとは違うな、と感じるぐらいで、特別な仕掛けがあるとは思えない。謎解きにしても、期待していたほどではない。数時間もプレイすれば『お姫様の救出』という目的は達せられる。いや、一度解法がわかってしまえば、10分程度でクリアーすることができるのだ。あまりに期待はずれで、ここで落胆したファンも多かったはずだ。
ところが、実は『ロマンシア』は羊の皮をかぶった狼だった。
たとえば、『ちょっと滑らかに感じたスクロール』は、最高スピードでは毎秒20画面を描き換えていた。どんどん湧いてくるユーモラスな敵キャラ(?)の牛などのキャラクターのバックのグラフィックは、なんと128重の重ね合わせ処理をチラつきゼロで実現していた。さらに、上記の最新プログラムテクニックに加え、実は20万エリアという広大なマップを持っているにも関わらず、プレイ中のディスクアクセスなし。PC-8801mkUSR版では、64Kバイトのオンメモリーでプレイできるように作られていたのだ。決して目立つ部分ではないかもしれないが、プレイヤーに快適に、そして楽しんでもらおうという、ファルコム一流のサービスであり、また挑戦だったのだと思う。
さて、かんたんにお姫様を救出できてしまい、拍子抜けしたところが、このゲームの本当のスタート地点。それまではプロローグに過ぎなかったのだ。そしてそこから始まる冒険は・・・・・・。難しいなんてもんじゃない!ヒントは少ないわ、イジワルだわ、ハマリ(リセットするしかない状況)はあるは、セーブは出来ないわで、えーっと何重苦になるんだ、っていうほど難しさ爆発。
ログインで『最新ゲーム徹底解剖』というゲーム攻略の定例ページが始まったのは、'87年5月号から。それまでは『ゲーム情報局』という読者の質問と解答、ヒントを掲載するたった4ページの記事が唯一の情報源だったこともあり、ソフトの発売後半年以上がたっても、ログイン編集部には質問のはがきが届いていたほどだ。一切のヒントを見ずに、完全にクリアーしたプレイヤーは、何パーセントくらいいたんだろう。ファンの要望に応えて『ザナドゥ・シナリオU』を期待どおりに難しく『作ってあげた』ファルコムの、このゲームこそファンへの挑戦状だったのではないかと思う。
結果、'87年の3、4、5月号と3ヶ月連続1位を含むベスト10在籍7ヶ月というヒット作品となったこの作品、その難しさを充分に味わってもらいたい。
最近のゲーム、特にコンシューマー機のゲームでは、発売前から攻略記事が掲載されるのが当たり前。事前にヒントを仕入れて、攻略本片手にプレイする人も多い。しかし、別に義務で、ノルマでゲームをするわけではないのだから、思いっきり悩んで謎を解き、そしてクリアーする。その達成感を、『ロマンシア』でもう一度思い出してほしい。どうしても解けなかったときは、ナビゲーションモードで再度チャレンジすればいいのだから。
最後にひとこと。次はぜひすべての追加シナリオが入った『ソーサリアン』完全版のリメイクをお願いします。
新井創士(元ログイン編集長)
(現・(株)アスキーファミ通ブロス編集長)
LAST UPDATE 2002/04/08 19:33:59
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